意識とはなにか―「私」を生成する脳 (ちくま新書)

やさしい問題を難しい問題として捉えることで、やさしい問題がよりリアルに感じられる。


メモ
・「哲学的ゾンビ」 現代科学は人間をあたかも哲学的ゾンビであるかのように扱っている。客観性を根源とする限り、そう扱わざるを得ない。
・心と脳、精神と物質の問題における「ニュートンのリンゴ」は未だ見つかっていない。ひとつの普遍的な法則の基に理解しようとする時期にきている。
・世界を構成するもっとも基本的な単位を、哲学者は個物と呼ぶ。
・世界の理解 まずは感じたものを分ける、分かれる、そしてそれをクオリアとして理解する。次にそのクオリアに言葉がタグづけされる。言葉が中心になると、言葉に言葉がタグづけされたり、その言葉に記憶されているクオリアをタグづけしたりするようになる。
チューリングは同性愛者だった。チューリングテストは男が女のふりをする実験設定だった。
・子どもの発達段階で、人間らしくなったと感じる瞬間は、ふりを通して遊ぶことを覚えたとき。
・乳幼児は、大人に見られていること自体が報酬となる。「子どもにとっては、見られていないことは、起こっていないのも同じである」
・自己という同一性は、他者との関係性によってうみだされる。他人が気になる、他人と比較せざるを得ないヤツは、自己確立が不十分?関係性によって自己の成長もある。
・あるものがあるものであることを理解する鍵はコミュニケーションにおける生成のプロセスを理解すること。A→B(B!)
・「ヘッブの法則シナプス結合の両側で、神経細胞が同時に活動すると、そのシナプス結合が強化される現象。
・「物理主義」 私たちを含むすべてのものは客観的なふるまいを記述可能だという考え。これにはカオスという穴がある。
・「計算主義」 万能マシンさえあれば、あとは適切なアルゴリズムを用いてどんなことでもシミュレーションできるという考え。これには計算資源の有限性、計算不可能性の穴がある。
量子力学の観点からすれば、石ころも椅子も今生成される連続である。その観点からすれば脳の中でクオリアが変化し、意識が生成され続けるプロセスもガテンがいく。
・今ここにあるものは、今ここで生成されつつあるもの。
・私たちは生成としての個を生きている。
永井均 私の存在の比類なさ