時間の矢、生命の矢

化学、物理学、量子力学、カオス理論、宇宙理論といったものから時間の不可逆性や生命とは何かを考察した本。

まとめメモ
・量子場の理論の大きな欠点の一つは、重力を扱えないこと。その場合に生じる無限大は、くりこみを使っても理論数学的に消すことができない。それにもかかわらず、多くの宇宙論学者は、重力の量子版が完成すれば、一般相対性理論における得意点の問題を解決できると思っている。
・新しくでてきたひも理論は、場の理論の「高次元版」と考えてよい。最小単位は点ではなく、限りある長さを持った物体、輪を作ったり両端のあったりする、ひもである。ひも理論なら手におえない無限大に悩まされることなく、重力を含む粒子間のすべての基本的相互作用を処理し、統一することができるかもしれない。少々楽観的ではあるが。
非線形系の審美性のあるリミットサイクルを数学者の研究者から、様々な分野に散逸構造の概念が影響を及ぼした。物理学、化学、生物学である。進化する系を数学的に記述するには、各瞬間の変化を追うことができる微分方程式が使われる。これらは、やはりフィードバック(分子が、自己強化、自滅、あるいは競争のどの状態であろうと、自らの運命に従って自らの役割を果たしている化学時計のようにがおこる社会生物学社会学、社会経済学、経済学といったよりソフトな分野にも応用された。
・様々な可能性がある中で、それとは逆の端にいるのが、生命である。生命内の化学反応は複雑だが見事に調和している。それぞれの反応は非常に特殊で、驚くほどの効率で進められている。プリコジンとスタンジュールは言う「これが偶然であるはずがない。ここで私たちは、物理学と生物学とを区別する第一の原理に出会う。生体系には過去がある。それらを構成する分子は、進化の結果作られたものである。それらは非常に特殊な自己組織化を行うために、自己触媒作用の仕組みの一部となるべく淘汰されてきた」それは目的をもった化学作用である。それは生命の奇跡である。
私たちの細胞のなかには、化学時計があって、妊娠と誕生から老化と死へと向かう直線的な筋道で、一連の生命サイクルを穏やかに調節している。これらの時計を記述する数学の学問の中に、時間の矢にとどまらす「生命の矢」を生み出す処方箋が含まれている。