共感覚者の驚くべき日常―形を味わう人、色を聴く人

本文もおもしろいが、第2部のエッセイが非常におもしろい。情動と理性の科学哲学的思考。

メモ
共感覚 Synesthesis
失語症は、人間にとって言葉が高次機能であることの証。言葉は思考に繋がっているのだから、失語症になったヒトはどうなるの?
・自分の個人的知識のなかに、内的思考さえも立ち入れない部分がある。無意識下の自分の存在がある。
・爬虫類の脳 旧哺乳類の脳 新哺乳類の脳
・哺乳類特有の行動 哺乳 母性父性的行動 音声によるコミュニケーション、遊び
・制度は人間の文明の産物だが、内的知識は人間の経験の産物。
・ジョゼフ・キャンベル ヒトが求めるのは人生の意味ではなく、行きているという経験だ
・創造性の3つの特徴
  1.どの問題が結果を生み出そうか、取り組む価値がありそうか感知する能力。
  2.選びだした問題を解けるという自信。
  3.ほかの人が諦めるような場面でもやりつづける粘り強さ。
・「異種感覚連合」 子供に何かをみせた後、暗い場所に移してもさっきみたものを触覚で選べる。人間にしかない、サルにはない能力。ものの意味、名前をつけられるからできる。
・「辺縁系の本能」 身繕い 習慣 儀式 ため込み 集団行動 なわばり防衛 欺瞞 求愛 服従 攻撃 社会化 模倣 など
・脳の仕組み
  1.神経インパルスは直線的ではなく並列的、多重的。
  2.一対一のマッピングではなく多数対一の分散システムである。
  3.皮質は外界からの刺激を分析するが、その情報の突出性を決めるのは辺縁脳。
  4.結果、私たちの行動を決めるのは情動的な評価であり、理屈ではない。
  5.人間は機械論では語れない、私たちを人間たらしめているのは理性よりも情動である。
・「液性伝達」 細胞外液で伝達される分子。ニューロンではないもうひとつの伝達手段がある。
・遺伝的伝達と文化的伝達
 ダーウィン的進化と知的進化
 遺伝子と言葉
 物質と精神
 細胞と思考
・外界の情報も体内の情報も必ず情動脳である辺縁系を通ってから皮質に分配される。そして高度に分析された情報が辺縁系に戻され、突出性の判断を受ける。突出性があれば、私たちは行動を起こす見込みが高い。 情動脳は突出性のバルブのようなもの。
共感覚は誰もが持っている正常な脳機能だが、その働きが意識に登る人が一握りなのかも?
・「コーンヒューバーの準備電位」 私たちが行動を決定するのは、自分の意思であると信じているのは思い違い。そのような決定は自分が自覚するよりずっと前に、自分自身の別の部分がどこかで開始した行動に対して、私たちが与えた解釈である。つまり決定は、決定すると考える前になされている。
・「チョムスキーチョムスキー 自然言語は生得的で、それに意識を行使しはじめると子供は途端に混乱する時期をむかえる。
・「人間原理」 利己主義・自己中心主義から利他主義へ ガイア論 客観世界観から主観世界観へ
 外界・他者を感じる力の本質は情動にある。
・「アユブ・オマヤ」意識は情動の一種。 情動は、心や、私たちが意識と呼んでいるものの基盤である。
・「上下の概念」
  意識は上、無意識は下
  支配するのは上、支配されるのは下
  良いことは上、悪いことは下
  理性的であるのは上、情動的であるのは下→ これは横たわる立ち上がる、満足いく、コントロールするといった身体的バイアスのほかに、未開の野蛮人は下等という文化的なバイアスがかかっている。

・人類学 上−下 内−外 中心−周辺 能動−受動など方向定位はすべての文化に存在する。文化の影響が存在のメタファを精巧にする。
・概念が変化すると、私たちが何を知覚するかも変わる。未知は上、良いことは上、完了は上。しかし、未知と完了は矛盾する。
・科学は天と地と人間がどのようにできたかをあつかい、芸術はその完成品をあつかう。
・客観性は、基盤となる先行の主観的経験なしには不可能である。客観性への移行はあなたをその経験の質から遠ざけるだけ。
・何をすべきか、どのようにそれをするか知っていると言う人は、科学信奉者。客観至上主義者。ああすればこうなる という考えと同じ。
・宗教の語源はサンスクリット語の「うしろとつながること」