知の体得―認知科学への提言

認知心理学の短所を包括し、そこに認知科学の到来の経緯をわかりやすく書いた本。

メモ
・こととしての「いま」が未来へ、過去へと拡がりをもったとき、それは時間と呼ばれ、またそれが空間に拡がりをもったとき、それは風土と呼ばれる。
・われわれは知的分析、科学を重ねることで、ある程度は絶対的認識に近い状態に到達する。それは「納得する」という過程を通してである。人が納得する際には、頭の中で極めて操作しやすいモデルを作り、さらにそのモデルの制約条件を変数化して、意図的に変形してみる。いろいろな視点で変数を与えてみて、納得に至る。
・直観 共感 感情移入 同調 子供 アニミズム
暗黙知 tacit knowledge
・全体として持つ意味を理解するためには、それを眺めるのではなく、そのなかに潜入しなければならない。
・概念的思考とは、心の知る働き、シンボル、知られた事象 の循環である。
・「ローレンツ」 進化の過程において、何かを学習するときには、良いもの快適なものをプラス側に、不快なものをマイナス側に振り分ける器官が必要。つまり開かれたプログラムが始まるとき、プラスとマイナスを感じる能力が発するとき。電撃 まず生命出現、次に意識、主観的体験(喜び悲しみ)、その次は反省意識、自我意識、最後に言語発生。
・「ターウィリガー」 言葉は曖昧さをもつことによってはじめて言葉でありうる。
・伝えるべき真実は言語で表現されうるものではなく、言語化されえない身体的感覚の世界にある。いわゆる勘、こつとか言われているものである。
・認識は認知系と行動系が循環して起こる。また認識とは変化を捉える働きである。
・知識の獲得 1*獲得は自動的には起こらない。己の内的緊張状態の持続が必要。2*獲得には選択性がある。己の目標によって活性化されるカテゴリが決定する。選択は動機づけになり活性化される。3*内的な緊張状態はそこに面白さがあり、達成感や満足感などの情動を得られるから持続する。
高等動物にしかないもの 高度な動機づけ 知的好奇心 概念的葛藤、 既存知識と新しい知識とのギャップ、認知構造の矛盾→知的好奇心→認識行動→外部内部情報収集→知識獲得
・人間は元来能動的な存在である。現状維持を打破し、積極的に不均衡を求める好奇心をもつ。「ヘップ」 生き物は活動していなければならない。
マズローの欲求構造 自己実現以外は欠損欲求であり、満たされると解消される。自己実現は満たされると強められる。
・「価値」 それぞれの時代、文化のなかで獲得されるもの。価値がわれわれの行動規範となり、行動を規定する。
マズロー自己実現は、アメリカ文化のなかで成り立つ。成り立たない文化もあるということ。自己実現は成長動機であり、加速する。それは先進国の文明の加速的発展、消費エネルギーの加速、情報量の加速的増大と関係する。危険性あり。
・「創発 emergence」ポラニー 「電撃」ローレンツ 「生命の衝動」ベルクソン は似ている。
・全体が部分の総和以上の働きをするのは、そこに創発が働いているから。
・「ローレンツ」 人間の生得的行動
  1.正義感 反社会的行為に対する先天的反応
  2.道徳 種保存に反する行為を禁ずるメカニズム
  3.愛他精神 家族や社会のために進んで自己を犠牲にする精神