ジャンケン文明論 (新潮新書)

アジア人の三すくみ観念について語った本。

中庸・寛容が大事。
・「世界」とは「世代」つまり時間と、「境界」つまり空間の概念。時間と空間が相補的に関係しあった意味だ。「宇宙」も同じ。宇は限りない空間を意味し、宙は無限の時間を意味する。西洋のWORLDやSPACEとわけがちがう!
アリストテレスは「魂は手である」カントは手を「外に露出した脳」という。日本人は昔から手を広い概念として扱ってきた。手が悪い 手加減 手を切る 手を焼く その手は食わぬ 手心。最近では環境には手入れが大事だという。養老孟司かだれかも言っている。日本人の概念の時代かな。
孔子「知る人は好む人に及ばず、好む人は楽しむ人に及ばず」
・西洋人の手の戯れがトッシングコインとするならば、東洋人はジャンケンである。西洋人のビール瓶は小瓶で一人で注いで飲むワンかっぷだが、ビールが東洋に入ってくると、大瓶に変わる。客を相手に酌して酒を飲むのが東洋であり、相手がいないと戯れられないジャンケンと同じ。
・モノはわけあうと貧しくなるが、心の感動はわけあうほどに広がりと深さを増していく。音楽は耳で飲む酒であり、酒は口で聞く音楽。
・ジャンケンの語源は「料簡法意りょうけんほうい」という仏教用語。料簡とは推量すること、法意とは法つまり天の意志。
・近代文明は偶然を追放し、予測可能な安定を目指してきた。古来東洋文明は偶然性を認め、共存する。陶磁器の芸術は、偶然性の美を追求する。琴や韓国のカヤグムは自然のノイズを含めて美しい音を出す。書道の筆も然り。西洋はヴァイオリン、ペンとノイズを排除する。
・聖書は7を使う。天地想像は7日間で完成、教会には7つの腕を持った大燈台、7人の使いがラッパをふく。故に西洋は虹を7色、音を7音階にした。東洋は五行説にちなむ。虹は5色、音は5音階。
・「差不多チャブドウ 」たいした差はない、という中国人の口癖。